知能機械システム工学専攻1年 上野秀貴
研修期間: 平成26年6月14日~8月15日(2ヶ月間)
研修先大学: コーネル大学(アメリカ合衆国)
研修受け入れ先: Shuler Laboratory
私は、文部科学省が運営するナノテクノロジープラットフォーム事業の一環として行われている「NNIN(National Nanotechnology Infrastructure Network ) 研修」に参加しました。本研修は、アメリカの大学に所属する学生を対象としたナノテクノロジーに関する研修に、日本の学生が派遣され、現地の大学で研究活動を行うプログラムです。現在、私は知能機械システム工学を専攻し、微細加工技術を応用した生物機能解明のためのデバイス開発を行っています。学部時代から機械工学を履修していますが、研究室に配属された後、今まで触れてこなかった生物分野の研究を行うこととなりました。今後、自ら研究の方向性やテーマを決定していくにあたり、世界的にも有名なアメリカの大学で、これまであまり触れられなかった生物学をベースとした研究に触れてみたいとの思いから、今回本研修への参加を希望しました。
本研修では、ニューヨーク州のコーネル大学にて、約2ヶ月間研究に携わらせていただきました。コーネル大学はイサカという名前の田舎町にあり、町の半分程度の面積を大学が占めています。とても美しいキャンパスと広大な自然が広がり、休日には湖の近くでお祭りなども行われます。
コーネル大学の風景
研究室
希望通りバイオ関連の研究を行っているShuler研究室に受け入れていただき、「Body-on-a-Chip」と呼ばれる研究に携わらせていただきました。「Body-on-a-Chip」とは、人体組織を手のひらサイズほどのデバイス(チップ)上に再現することを目的とした研究です。将来的には人体の細胞を用いた薬剤開発及び臨床試験を可能とし、試験期間および費用の大幅な削減、また、患者個々人の細胞組織を再現することで、薬剤投与前に個人レベルでの、副作用等の検証が可能となると期待されています。Shuler Labでの先行研究では、人間の腸内環境を再現するためのメンブレン(膜)とデバイスの作製が行われていましたが、極めて薄膜でなければならないメンブレンの強度が不足していました。そこで、今回の研修では、メンブレンの強度不足を改善するため、従来のものと比較して十分な強度を有するフレームつきのメンブレンを作製し、体内流量再現デバイスを設計?作製しました。採択されるか否かは未定ですが、現在コーネル大学にて、本デバイスの構造の特許を申請中です。また、メンブレンの3D化のため、現在香川大学との共同研究を始めています。
大学の敷地内には多くの機関があり、技術者同士の交流が盛んに行われていました。日本では同じ学校内でも学科を隔てるとなかなか交流が難しいですが、コーネル大学ではピクニックなどの行事が盛んに行われており、お祭りなど一般の方も参加できるイベントも構内の敷地を利用して開催されていました。また、他の研究機関の見学及び研修ツアーも隔週で行われ、申請すれば基本的に誰でも無料で受講できるため、気軽に他の機関の設備を学び、自身の研究に生かすことが出来ます。
野球観戦
メトロポリタン美術館
タイムズ?スクエア
コーネル大学での研修を終えた後、ジョージア州のジョージア工科大学に移動し、成果報告を行いました。成果報告はプレゼンテーションとポスタ発表からなり、英語でのプレゼン、ポスタ発表共に経験がなかった私にとっては、言語以外にも苦労する事が多々ありましたが、いずれの発表も無事終わってみると、困難であっただけすばらしい経験となったと感じます。ジョージア大学はコーネル大学とは異なり、アトランタの町の中心近くにあるため、大学近くにジョージア水族館、ワールド?オブ?コカコーラなどの大型の娯楽施設が多数あり、4日間の滞在期間は、発表への緊張感とも相まって本当に短く感じました。
同じプログラムに参加していた学生達
私は、学部生のころから、工学部の国際インターンシップに参加することをひとつの目標とし、これまで協定校訪問、語学研修そして国内でのインターンシップ等に取り組んできましたが、今回の研修は2ヶ月というきわめて短い期間中に成果を出さなければならず、専門的な知識も問われることから、アメリカに出発する前は不安だらけでした。実際に研修を終えてみて、英語力や研究者としてのスキルの大幅な向上などは実感できませんが、自分の中で出来ないのではないかと思っていたことを、実際に行えたという経験は私の中で大きな財産となったと思います。そして世界有数の大学の学生と同じ環境で研究に携われた今回の体験から、香川大学も少なくとも設備の面においてまったく劣っておらず、自らの意思次第で、大きな成果を出すことが出来ると確信しました。今後、研究者として生涯を送りたいと考えているので、今回の貴重な体験で感じたことを忘れず、今後の更なる目標に向かって努力していこうと思います。